8 制御工学の理論
生命現象を記述する為の制御工学の理論を整備します。
8 制御工学の理論
生命現象を記述する為の制御工学の理論を整備します。
2022/09/17 うつせみ
生命現象の本質は、まだ、全く解りません。
ただ、表面的性質は記述可能です。生命現象は、自己保存系の環境変化への適応行為なので、形式的には、制御工学の理論を使って記述可能です。
ここでは、この生命現象を記述可能な制御工学の理論を作っています。
なお、生物進化の現象も、生命現象の一部なので、この考え方が適用可能です。
生命現象を記述する為に必要となる制御工学の理論を整備します。
これを使って、自己保存系の振る舞いを考察、記述します。
生命現象が、この宇宙に存在している事実は、それが宇宙の構造の一部であることを物語っています。つまり、この宇宙の構成要素のひとつです。
この宇宙の構造に組み込まれた一部として、生命現象を理解したいのですが、残念ながら、現状では不可能です。そもそも、それ以前の問題として、宇宙の構造自体が解らないからです。
そこで、ここでは、取り敢えず手持ちの知識を使って、分かる範囲で、生命現象を記述することを試みています。
現代の工学者が使っている制御理論は、生命現象を記述する目的には、全く、使い物になりませんでした。そこで、ゼロから作り直しています。
元々は、物理学用の認識論を論ずる為に作成したものです。認識過程を、哲学的空想の問題としてではなくて、具体的な情報学の問題として処理するつもりで作業を開始しました。具体的には、時空認識と、時間と空間の相対性を論ずることでした。
(人間という動物の)認識するという行為自体も生命現象の一部なので、制御工学の対象です。哲学的空想の問題ではありません。
実際に出来上がってみると、この思考形式は、非常に便利でした。生命現象全般に適用可能でした。生命現象の本質を非常に単純に表現できました。
無意識のうちに、様々な他の生命現象にも適用していました。哲学や、心理学、脳科学、生物学、工学など、広い分野で、全く新しい切り口を与えてくれました。この進化論もその成果のひとつです。
この制御理論は、具体的には、次の目標に沿って、整備を急いでいます。
でも、道は遥かに遠いです。解決すべき数学的問題が山積みです。
ゴールは、薄ぼんやり見えているのに、そこに至る道は、試行錯誤の山です。
時間とは何か
なお、この制御理論は、『時間とは何か?』に関して、全く新しい考え方を採用しています。だから、根本的問題で、ふと、違和感を感じるかもしれません。(出来るだけ触れないようには努力しています。でも、、、)
物理時間は二種類あります。『繰り返す時間』と『繰り返さない時間』の二つです。この宇宙を構成している物理現象は、このふたつの時間が複雑に絡み合って構成されています。
(今問題となっている)生命現象や制御の問題は、『繰り返さない時間』に依存しています。時間が繰り返さないから、ニュートン力学的時間の運命論に逆らって、制御が可能になっています。つまり、未来は不確定です。
(そもそも、未来が確定していたら、制御は不可能です。このような時間に関する根本的問題が潜んでいます。)
詳細は、『川の流れに逆らって生きるサカナ』、『3つの時間』を参照下さい。現代科学の常識とは、遥かに懸け離れたトリッキーな思考作業を行っています。
生命現象は、生物と環境との相互作用の上に成り立っています。
生物にとって、『生きる。(自己を保存する)』とは、この生物と環境との相対関係が、生物にとって都合のいいある一定の状態に保たれ続けることを意味しています。
生命現象を構成している相互作用 |
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生物にとって、『生きる。』、即ち、『自己を保存する。』とは、生命相互作用を通して、生物と環境との相対関係が、生物にとって、都合のいいある一定の状態に、保たれ続けることを意味しています。 注)生命相互作用の物理的意味は、まだ分かりません。これの性質を解明することが、最終的目的です。 このあたりの事情は、「時間のドグマ」「補足01:生命相互作用の物理学的意味」を参照下さい。未知の厄介な問題に直面しています。 |
この生命相互作用は、環境から生物へ働くと同時に、生物の側からも環境に影響を与えています。一方的関係ではありません。
例えは、大気中の酸素は、元々は、光合成の結果、生物が作り出した産業廃棄物でした。塩素と同じような猛毒の排泄物でした。それが、巡り巡って、(新しい環境として、)今度は、生物に大きな影響を与えました。嫌気性だけの生物の世界に、猛毒に適応した好気性の生物が登場してきました。好気性生物は、酸素の高い活性を利用して、高いエネルギー効率を実現しました。
この生物と環境の間で働いてる相互作用は、循環しており、図に纏めると、下図のように表現されます。この作用のフィードバック過程が制御システムを構成していると考えました。即ち、フィードバック制御です。
生物と環境との間の作用のフィードバック |
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生物から環境に向かう作用を、信号『x』と、環境から生物に向かう作用を、信号『y』と記述しています。 |
作用 | 説明 |
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x | 生物から、環境に向かう作用(信号) |
y | 環境から、生物に向かう作用(信号) |
生物と環境は、思考形式上は、関数として記述されます。
生物を、関数『 B 』と記述するなら、生物は信号 y の信号 x への変換器ですので、下記のように記述されます。
x = B(y)
一方、環境は、逆の関係です。環境を、関数『 E 』と記述するなら、環境は、信号 x の信号 y への変換器ですので、下記のように記述されます。
y = E(x)
関数 | 関数の説明 |
---|---|
生物(B) | 信号yの、信号xへの変換器。 |
環境(E) | 信号xの、信号yへの変換器。 |
環境は、生物から影響を受けると同時に、生物とは無関係な原因によっても変動しています。
天体の衝突や、太陽活動、火山の爆発などの地殻変動によって、環境は大きな影響を受けますが、これらの変化は、生物の存在や、都合とは、全く、関係のないものです。
世間では、このような生物の存在とは無関係な外乱だけを指して、環境変化と呼んでいる場合も結構あります。でも、実際には、生物の作用も大きな影響を与えています。
この外乱を、上の図に追加すると、下図のようになります。
生命相互作用への外乱の混入 |
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環境は、天体衝突のように、生物の存在とは無関係な原因によっても変動しています。この変動を、外乱『r』と記述します。 |
作用 | 説明 |
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x | 生物から、環境に向かう作用(信号) |
y | 環境から、生物に向かう作用(信号) |
r | 外乱。生物の都合とは無関係に生じている環境変化、又は、作用 |
環境から、生物への作用、即ち、信号 y は、生物から環境への作用 x と、外乱 r の関数となっています。その関数記述は、より正確には、下記のようになります。
y = E(x,r)
今西錦司氏(以下敬称略)の『状況の主体化』を使って理解します。
生物と環境の間に生じている相互作用が平衡状態を保つ為には、上で述べた外乱に対抗する作用が、このフィードバック過程の何処かに加わる必要があります。この新しい作用を、今西の『状況の主体化』を使って説明します。
生物が自己保存する為には、生物と環境との相対関係を、生物にとって都合のいい、ある一定の状態に保ち続ける必要があります。
例えは、温度環境を例にとれば、生物は、自己の都合のいい温度帯に留まり続ける必要があります。寒さに適応した生物は寒い場所に、暑さに適応した生物は暑い場所に、留まり続ける必要があります。
その為には、生物にとって、どの程度、都合がいいか、生物の主観的基準に基づいて、その都合のいい度合を、数値化する必要があります。この基準は、客観的なものではなくて、各生物の都合によって、夫々異なっている、極めて主観的で、固有なものです。
このような生物の側からの基準に基づいた、即ち、生物の主観的都合に基づいた数値を作り出す行為を、今西錦司(以下敬称略)は、『状況の主体化』と呼んでいました。つまり、自分の置かれている状況を、自分の都合に基づいて、主観的に評価する行為です。
客観的に評価することではありません。あくまでも、自己中心的に、自分の都合に合わせて、主観的に評価する必要があります。自分が生きるのですから。
ここでは、この今西の用語と概念をそのまま使っています。
このようにして作り出されてた数値を、フロイトは『テンション』と呼んでいました。フロイトは、このテンションが運動器官に向かって放出されることによって、運動が生じると考えていました。彼は、心の動きを、このテンションの生成と、放出と、消滅によって説明していました。
つまり、心(脳)という電子回路を流れる信号を、テンションと呼んでいました。そう理解すると、フロイトの説明は、非常に理解し易くなります。心理学者のくせに、まるで、工学者のようです。説明が物理的で合理的です。
それに対して、ほとんどの心理学者の説明は、言葉に拘った空想です。言葉によって説明するのではなくて、物理的作用の因果関係に基づて説明すべきです。
用語の定義 | ||
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用語 | 提唱者 | 意味 |
状況の主体化 | 今西錦司 | 生きる事と直接結びついた数値を作り出す行為。 自己保存系が、自己の置かれている状況を主観的に評価する行為。 即ち、自己と環境との相対関係を、自己の都合を基準にして、自己にとって都合がいいかどうかを、主観的に評価する行為。 |
テンション | フロイト | 生きる事と直接結びついた数値。 即ち、『状況の主体化』という行為によって作り出された数値。 |
テンションの性質
このテンションは、動物の神経組織において、一定の性質を持っています。
動物の神経組織は、自己の置かれている立場が悪ければ、興奮状態になります。都合がよければ、何もする必要が無いので、無興奮状態になります。
つまり、都合が悪くなると、心の中にテンション(興奮)が発生します。そのテンションを、運動器官へ向かって放出することによって、何らかの行動が生じています。
逆に都合が良ければ、何もする必要がないので、テンションは消滅します。テンションが存在しないので、行動もおこりません。
テンションの性質 | ||
---|---|---|
自己の置かれている状況 | テンション | 説明 |
都合がいい場合 | ゼロ | 無興奮状態になります。 無興奮なので、行動は生じません。 |
都合が悪い場合 | 正の値 | 興奮状態になります。 興奮状態なので、何らかの行動が生じます。 |
ー | 負の値 | テンションが負の値になることはありません。 両極端の環境が、夫々別々に主体化されて、この二つのシステムの対立と拮抗として制御されています。 |
生物の場合、テンションはマイナスの値を取ることはありません。それ故、相反する状況に妥協しなければいけない場合、相反する状況を夫々主体化して、その二つの状況の拮抗として制御しています。(ここに、哲学的意味での『価値観』、又は、『価値判断』の原形を見出すことが出来ます。)
例えは、生物の場合、暑すぎても、寒すぎても、困ります。寒さを感じる感覚細胞と、暑さを感じる感覚細胞は、夫々異なっています。各感覚細胞は、ある特定の都合が悪い状況を、知覚するように特化しています。暑さから寒さまでを感じることが出来る万能の感覚細胞は存在していません。
相反する2つの信号が拮抗することによって、行動が生じています。寒さを強く感じる時には、暖かい方向に、暑さを強く感じる時は、涼しい方向に行動します。
状況の主体化を付加したモデル
この今西とフロイトの辿り着いた結論を追加することによって、始めて、生物型制御理論の枠組みが完成します。それは、丁度、環境に混入している外乱に対抗する作用として機能します。
これを、今までの図に追加すると、下図のようになります。この思考形式自体は、対称性を持ちます。上下左右を、逆転しても、思考形式上は、全く問題ありません。物理的作用の向きは、同じになります。
注)対称性を持った記述形式(理論)は、成功する可能性が高くなります。
生命現象を支えている制御システム | |
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制御システムの構造 | 上下左右を逆転 |
![]() | ![]() |
生命現象を支えている制御システムは、4つの作用から構成されます。 | 左図の上下左右を逆転しても作用(矢印)の向きは同じなります。 対称性を持ちます。 |
生物の行動を支配している物理量、即ち、テンションを、信号『t』と記述しています。生物は、信号『y』と、信号『t』の関数として記述できますので、下記のようになります。
x=B(y,t)
作用 | 説明 |
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x | 生物から、環境に向かう作用(信号) |
y | 環境から、生物に向かう作用(信号) |
r | 外乱。 生物の都合とは無関係に生じている環境変化 |
t | 状況の主体化。 フロイトがテンションと呼んでいるもの。 自己の生存にとって都合がいいかどうかを数値化。 |
この図で、生物や、環境は、数学的には、関数として記述可能です。
環境からの出力信号 y は、生物からの入力信号 x と、外乱 r の関数となっています。
生物からの出力信号 x は、環境からの入力信号 y と、状況を主体化した変数 t の関数になっています。
生物と環境の数学的表現 | ||
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構成要素 | 関数表現 | 説明 |
生物 | x = B(y,t) | 生物は、環境からの作用『y』と、テンション『t』の関数です。 |
環境 | y = E(x,r) | 環境は、生物からの作用『x』と、外乱『r』の関数です。 |
人間の脳における状況の主体化
人間の脳の場合、この状況の主体化は、視覚野に、その片鱗を見ることができます。ただし、脳に関する情報は、まだ、断片的にしか分かりません。
目から流入した視覚情報は、脳の後頭葉の視覚野に投影されます。ここでは、漫然と処理されている訳ではなくて、各神経細胞毎に、異なった情報の主体化が行われています。点に反応する視覚野細胞、線に反応する視覚野細胞、並行線に反応する視覚野細胞等、情報の意味毎に、反応する細胞が異なっています。
これらの主体化は、階層化されていて、多段階になっているようです。単純な情報の主体化から、より複雑な主体化へと積み上げられ、最終的には、人間の顔に反応する細胞も見られるようです。
顔の認識の前段階では、目玉の主体化、即ち、大きな2つの丸い点に反応する細胞も存在しているものと思われます。これらの細胞群からの情報が合わさって、顔を認識する細胞が発火するものと思われます。
この目玉の主体化は、動物一般に広く存在しているものと思われます。と言うのも、昆虫たちの姿には、やたらと、この目玉を擬態した模様が多いからです。この目玉の主体化が、頭部の認識、即ち、攻撃対象である急所の認識に繋がっているのかもしれません。昆虫たちは、目玉模様を擬態することによって、即ち、ダミーの頭部を作ることによって、急所への攻撃を逸らしているのかもしれません。
昆虫たちの争いを見ていると、攻撃対象は、頭部、又は、首などの急所に集中しています。一体、どうやって、何を手掛かりにして、その急所を主体化しているのでしょうか。小さな神経組織しか持っていないのに、不思議です。
或いは、鳥に代表さえるように、動物は、眼玉模様を本能的に嫌がります。それを利用した回避行動かもしれません。
我々の視覚情報は、このような状況の主体化の集合体であり、そのひとつひとつに、生きることの意味が結びついています。それらの生きることと結びついた情報の集合体が、我々の感じているイメージです。
視覚野における状況の主体化の階層イメージ | |
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階層 | 主体化の説明 |
高次階層 | 目玉模様を検出。 人間の顔を検出。 その他、様々な状況が主体化されており、我々は、それらの総合的な組み合わせで映像の意味を理解しています。 |
。。 | 。。。。。 |
第3階層 | 平行線に反応する細胞。 二つの平行に並んだ線の状況を主体化。 |
第2階層 | 線に反応する細胞。 点が真っ直ぐ並んだ線の状況を主体化。 |
基底階層 | 点に反応する細胞。 まず最初に、光の点が主体化されます。 |
上の表は、視覚野で行われている情報の主体化のイメージです。まだ情報が断片的で、詳細は、よく解りません。
このような階層構造は、複眼で構成された昆虫たちの視覚システムでも、見られるようです。解剖学的に複数の階層から構成されていることが判別できるみたいです。昆虫の方が、行動様式が単純なので、昆虫の視覚システムを調べたら、意外と全体像が掴み易いかもしれません。
昆虫たちの視覚システムにおける最初の主体化は、最も信号強度の強い個眼の特定。即ち、点情報の主体化です。
昆虫の複眼は、多数の個眼の集合体で構成されています。
獲物からの光信号は、その構造上、複数の個眼に跨って投影されます。従って、このままだと、極めて、解像度が悪くなります。個眼の数程の解像度を得ることはできません。もっと、ぼんやりとした解像度になります。
そこで、最初に行う情報処理は、隣り合った個眼同士の信号強度を比較することによって、最も強く反応している個眼を特定する行為です。
この情報の主体化によって、始めて、個眼の数と同じ解像度を得ることが可能になります。
実際に、ロボットを制作する場合は、この状況の主体化、即ち、生きることと直接結びついた量の、階層構造をどのように理解するかがポイントになってきそうです。その為に、効率よく表現可能な数学的形式の開発が急務です。
状況の主体化の関数表現
状況の主体化という行為自体も、関数で表現可能です。
テンションは、環境からの作用と、生物の『生きる(自己保存)』という目的とから作り出されています。
従って、この関数を『S』、生きる目的を『m』と記述するなら、下記のように表現されます。
t= S(y,m)
値『m』を抽象的に「生きる目的」と表現しましたが、制御工学では具体的に「制御目標値」と呼んでいます。
脳内部での情報処理を考察する場合は、かなり複雑に生きる目的が細分化され、それの階層構造の上に成り立っていますので、つまり、生きる目的の細分化とその階層構造を分析する作業が重要になりますから、やはり、ここは抽象的に「生きる目的」と表現した方が賢明かと思います。
将来的には、目的制御がテーマになると思います。目的の分析と細分化、そして、その目的の階層構造全体を、如何にして制御するかです。道は遠いですが。
単純な制御システムの場合、「制御目標値」と呼んだ方が、直観的理解が簡単です。制御目標値と現実の差が、制御の対象になります。この差がゼロになるように制御します。
簡単なシステムの場合の関数表現: t = (y - m)
ちなみに、孫氏の兵法では、『国が生き残る事(自己保存)』を目的に設定し、現状の分析と、各種手段の実行が説かれていました。いわゆる「戦わずして勝つ」です。実際の戦争では、勝っても負けても、動員された兵士の死亡や戦略物資の浪費で、国力を大きく棄損します。古代国家唯一の GDP の源泉である(動員された)農民兵が失われ、農業生産に影響します。この為、国力を棄損することなく、『国が生き残る』為には、戦争は避けて、別の手段で勝利することを説いていました。(戦争に勝つことが目的ではなくて、国が生き残ることが目的なので、当たり前ですね。)
孫氏の兵法は、生命現象の基本に忠実でした。
「戦争は政治のいち手段」。戦術と戦略を混同しない方が賢明かも。戦略目的を明確に自覚すべきかも。生物の戦略目的は、「生きる」、即ち、自己保存です。後は、全て、その為の手段です。
まとめ
以上の内容を纏めます。
自己保存系は、4つの作用によって構成されます。その4つの作用の関係は、下図のようになります。
自己保存系の構造 |
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生命現象を支えている制御システムは、4つの作用から構成されます。 |
自己保存系を構成する4つの作用 | ||
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No | 信号 | 説明 |
1 | x | 生物から環境に向かう作用 |
2 | y | 環境から生物に向かう作用 |
3 | r | 環境自身が持っている外乱 |
4 | t | 状況を主体化した量 生きる事と直接結びついて量 |
そして、生物と環境は、数学的には、関数として表現されます。
生物と環境の数学的表現 | ||
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構成要素 | 関数表現 | 説明 |
生物 | x = B(y,t) | 生物(B)は、環境からの作用『y』と、テンション『t』の関数です。 |
環境 | y = E(x,r) | 環境(E)は、生物からの作用『x』と、外乱『r』の関数です。 |
動き回る動物の場合、右側の情報は大脳左半球に投影され、左側の情報は右半球に投影されます。環境と脳とでは、情報の投影のされ方が反転しています。その原因です。
生物と環境の関係を関数として表現した場合、生物は、環境の逆関数になっています。
脳の左右が逆転しているのも、これが原因と思われます。
この自己保存系が、うまく、自己保存されている場合は、生物と環境との関係がある一定の状態に保たれ、平衡状態になります。即ち、生物への入力信号 y は、ある一定値になることが、期待されます。例えは、生物は、最も自己に都合のいい温度帯に留まり続けようとします。即ち、環境からの入力信号y は、最も最適な一定の温度になります。
生物は環境の逆関数になっている。
このような状態では、生物は、環境の逆関数になります。生物学的には、環境の変化に対して、それを相殺するように、生物は行動します。
数学的には、2つの関数を繋げると、下記のように表現されます。大雑把には、恒等写像になります。
生物は、x=B(y,t) と表現されますから、環境を表現する式、y=E(x,r) の 環境への入力 x を、x=B(y,t) で置き換えると、y=E( B(y,t) ,r ) と表現されます。この 環境からの出力信号 y が、最適な状態に置かれた場合には、生物に都合のいい最適な一定値になります。
(最適値に収束する為に、多少の振動は発生しています。)
この生物が環境の逆関数になっていることは、我々動物の脳の左右が逆転している事と密接な関係にあるようです。
動物の脳のように、ワイヤードロジックによって、制御システムを構成した場合、(即ち、神経細胞の配線よって、状況の主体化ロジックを構成した場合、)その空間的因果関係も逆転してしまう為、(つまり、空間配置も逆転してしまう為)と思われます。
【脳の左右が逆転している原因】
脳は環境の逆関数になっています。
ワイヤードロジックによって、状況の主体化を実現したら、その空間配置も逆転してしまう為と思われます。
要は、作用の因果関係の問題です。原因と結果の連鎖の問題です。
例えば、人間の視覚野は、漫然と視覚情報を処理している訳ではありません。夫々の細胞が役割分担をしています。点に反応する細胞もあれば、直線に反応する細胞もあります。平行線に反応する細胞もあります。高度なところでは、2つの点の組み合わせ、即ち、眼玉模様のパタンに反応する細胞もあります。
情報の意味がひとつひとつが抽出されて、生きる意味に変換されて、それらの組み合わせによって、視覚情報は理解されています。そこで、情報の主体化、即ち、生きる事との関連が分析されています。例えば、目玉模様を、動物は本能的嫌います。それゆえ、蝶や蛾の中には、目玉模様を持ったものが、多く存在します。
蛇の赤外線を感知するピット器官は、皮膚が変化したものです。眼とは、進化の過程が大きく異なっています。眼は、動物の進化と同時に始まりましたが、ピット器官は、蛇の進化と共に始まりましたから、高々、まだ1億年程度です。
それでも、眼と同様に、左右が反転しています。右側の熱源は、脳の左側に投影され、左側の熱源は、脳の右側に投影されます。
暗い洞窟の中で暮らしている昆虫の場合、(頭の先にある)触覚も空間認識を作り出す事が可能みたいです。触覚を動かして辺りを探っています。この場合も、(触覚情報は)左右が反転していると思われます。
左右が反転しているのは、決して、進化のイタズラや、偶然ではなくて、切実な理由が隠されていると思われます。
しかし、数学的に正確に説明する為には、まだ、まだ、乗り越える必要がある壁が幾つも残っています。もし、これが実現したら、その時には、生物型制御原理に基づくロボットの制御も実用化すると思います。
現代のAIのような「なぜ、そんな出力になるのか?」を説明できない恐怖からも解放されることになると思います。
注)脳は、左右だけでなく、前後も逆転しているように見えます。人間の視覚野は、頭の後ろ側にあります。眼は前に付いているので、配線コストを考えると、前側に投影した方が、配線が短くて済みます。それが、なぜ、わざわぜ、配線コストを無視して、脳の後ろ側(視覚野)に投影しているのでしょうか。なぜ、こんな面倒くさいことをしているのでしょうか。。。(でも、多分、気のせいですね。)
鏡に文字を映すと、左右が反転します。
これは、「脳の左右が反転している事と、密接な関係があるのでは?」と、一瞬、疑いました。それが証拠に、上下は逆転していません。
そこで、「鏡に映した文字は、なぜ反転するのか?」の問題を解いてみました。
結論:関係ありませんでした。
ただの単なるトリックに過ぎませんでした。
映す前に、既に、左右が反転していました。それに、みんなが気付いていなかっただけでした。
鏡は文字を左右反転させていない。反転しているように見えるのは、紙に向かって文字を書いた時と、それを鏡に写して見た時とで、回れ右して、姿勢を180度回転させている為でした。この時、つまり、回れ右した時に左右が入れ替わりました。
(地面基準の)絶対座標と(人間基準の)相対座標の勘違いを利用したトリックでした。人間は、自分を「絶対的基準だ」と思い込んでいます。
配置図で検証 |
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ポイントは、二つの座標系を区別すること。 地面に固定された絶対座標系は、「東西南北」と表記。(変化しない) 人間に固定された相対座標系は、「上下左右」と表記。(姿勢を変えると、コロコロ変わる) 北向きの壁に、文字を書きます。顔は南を向いています。 左の女の子は、(鏡を見る為に)顔を北に向けた時のイメージです。南を向いて書き、(鏡を見る為に)北を向いたので、既に、左右は反転しています。紙を裏返した時と同じ状態です。 しかし、地面基準で見たら、青矢印は最初から西向きのままです。 鏡の中の青矢印も、やはり、西向きです。東向きに反転していません。 鏡自体は像を反転させていません。 (重要)ポイントは、東西南北(絶対座標)で理解することです。地面に固定された物は、人間の姿勢が変わっても、常に不変に保たれます。壁は、地面に固定されています。矢印は、常に西向きです。 一方、左右は、(人間を基準にした方位なので、)体の向きによって変わります。180度「回れ右」すると、地面に固定された物の左右は反転します。つまり、文字は反転して見えます。 これが、鏡問題の混乱の原因です。南に向いて文字を書き、鏡に映っているイメージを確認する為に「回れ右」して顔を北に向けた時に、(人間から見た)左右が反転しました。 |
詳細はリンク先を参照下さい。
制御の問題には、その根底に『時間のドグマ』の問題が潜んでいます。
「時間とは何か?」の中に、制御に関する根本的問題が潜んでいます。
現代科学の『時間のドグマ』に従うなら、時間は過去も未来も運命論的です。川の流れのように、ある方向に向かって、とうとうと流れています。ニュートン力学を使えば、過去も未来も一意に計算可能です。
従って、『時間のドグマ』の中では、未来を変える事は不可能な筈です。つまり、未来を制御する事など不可能な筈です。しかし、現実には、制御は可能です。現実とドグマが一致していません。
なぜでしょうか?
制御の問題には、このような『時間のドグマ』が潜んでいます。ここでは、『時間とは何か?』に関して、全く新しい考え方を採用しています。
科学的迷信に惑わされる事なく、注意深く現実を観察する事を希望します。実は、物理時間は二種類存在しています。『繰り返す時間』と『繰り返さない時間』の二つです。
これ以外に、心の中の時間、即ち、『記憶の糸』も存在しています。我々人間の時間の観念は、合計、三種類の時間より構成されています。
三つの時間 |
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時間は、三種類あります。 物理世界は、繰り返す時間と、繰り返さない時間二つで構成されています。 心の世界は、記憶の糸より構成されています。 二つの物理時間が縺れ合うようにして、心の中に蓄積して、結果、記憶の糸が作り出されています。 時間は、一種類ではありません。三種類です。 |
繰り返す時間
地球が太陽の周りを回るのは『繰り返す時間』です。未来永劫、繰り返します。繰り返すから、未来は計算可能です。一般に、天体の運動は、繰り返しています。『時間のドグマ』が成り立っている世界です。ニュートン力学が、時間に関して、過去も未来も計算可能なのは、これが原因です。これが、繰り返す時間、即ち、天体の運動に関する理論だからです。
繰り返さない時間
一方、火が燃える現象や生命現象は繰り返しません。一度、燃えてしまった物は、二度と元には戻りません。我々生命も、一度死ぬと、二度と蘇りません。つまり、時間は繰り返していません。『時間のドグマ』が成り立っていない世界です。
物理学理論で言えば、熱力学や量子力学は、繰り返さない時間に関する物理学理論です。これらの理論が、常識的直観に反して不可解なのは、繰り返さない物理現象を、無理やり、繰り返す時間で理解しようとしている為です。つまり、根底に『時間のドグマ』に関する矛盾を抱えている為です。
生命現象やロボットの制御は、『繰り返さない時間』に依存しています。繰り返さないからこそ、未来は不確定になって、選択の余地が生まれます。つまり、制御が可能になります。
この事を、物理学的に正確に説明するには、素粒子レベルのミクロな現象について論じる必要があります。『繰り返す時間』は、宇宙全体との定常な存在状態を意味しています。『繰り返さない時間』は、そのような宇宙全体との存在状態の変更を意味しています。思考作業が、結構、狂気染みています。
詳細は、『川の流れに逆らって生きるサカナ』、『三つの時間』を参照下さい。
『時間』は存在する実体ではない
今までの話を、根底から全否定して申し訳ないですが、厳密には、『時間、空間、物質』は、存在する実体ではありません。我々の存在しているこの宇宙は、そのような実在物で構成されている訳ではありません。これらは、脳内部の情報の処理形式です。その正体は価値観です。人間は、外界からの信号を、このような価値観を使って、情報処理しているに過ぎません。
現実世界から仮想世界への投影 |
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動物は、外部感覚器官から得られた電気信号を、 1) 『自己、時間、空間、物質』という情報の処理形式(仮想空間)の上に、マッピングしています。 2) そして、このマッピングされた情報に基づいて行動を起こしています。<< ここ重要。 3) なお、現実世界の真の姿は不可知です。我々は、認識された範囲内でしか理解できません。 この仕組みは、動物進化五億年の実績によって、最適化されています。従って、我々は、見たままに行動しても、不都合を感じることはありません。実際、目の前のコップは、何の疑念も抱かずに手掴みできます。(システムが最適化されているからです。実在物だからではありません。そう信じたい気持ちは分かりますが。) この情報処理の形式は、犬たちも持っています。動物進化を共有しているので。それ故、犬と人間の間では、共通のゲーム(鬼ごっこ)が成り立ちます。 (仮想空間へ)マッピング出来る信号は視覚情報だけではありません。目の不自由な方は、イルカやコウモリ同様、聴覚情報も、そこそこの精度でマッピング可能です。このマッピングされた聴覚情報に基づいて、我々と同じような正常な行動が可能です。(多少のハンディはありますが。)ちなみに、イルカやコウモリは、我々の視覚と同程度に、正確な行動が可能です。超音波を利用しているので、小さな物体の識別も可能です。真っ暗な洞窟で暮らす昆虫は、触覚からも、このような空間認識を作り出すことが可能みたいです。 我々普通の人間も、音のした方向に振り向く事はできます。能力は貧弱ですが、聴覚情報からも、空間認識は可能です。人間は、視覚情報に、強く執着しています。聴覚や嗅覚は、疎かにしています。かつて木の上で暮らしていたサルという動物の宿命です。 なお、現実世界は、(厳密には)不可知です。我々は、あくまでも、認識された範囲内でしか現実世界を知ることはできません。外部感覚器官から脳に向かって流れているものは、あくまでも、電気的パルス信号に過ぎないからです。外部感覚器官は知覚した情報を、神経組織上を流れる電気的パルス信号に変換して、脳に送っています。そのパルス信号を、脳内部で再構成して、仮想空間にマッピングして、信号の意味を理解しているに過ぎません。 つまり、外部感覚器官からの信号を、『自己、時間、空間、物質』という形式に正規化しています。そして、この正規化された情報から、行動を生じさせています。 |
『時間』も存在する実体ではありません。余り、深く考え込まない方が賢明かもしれません。この問題には、奥底に「死の恐怖」が潜んでいるので。
火が燃える現象や生命現象は、宇宙全体との相対的存在状態の変更なので、一度、変更したら、変更前の存在状態に戻ることはありません。元に戻すなら、再度、存在状態を変更する必要があります。それが、可能かどうかは分かりませんが。
多分、不可能です。肝心の宇宙全体が、既に別の存在状態に遷移しているからです。宇宙全体を元に戻す事はできません。命は、一度死ぬと、二度と蘇りません。繰り返しません。(なお、自分にも、この問題は、まだ解けていません。断片的に理解しているのみです。)
「制御する」とは、新しい存在状態に遷移する為の手順です。
背景には、未来の不確定性が潜んでいます。未来が不確定だからこそ、選択の余地が生まれて、存在状態の変更が可能になります。つまり、制御が可能になります。
我々の存在しているこの宇宙は、存在に関して、(莫大な)自由度が残っています。この『存在の自由度』の事を、現代の物理学者は、『空間』と呼んでいます。この宇宙は、莫大な自由度、即ち、広大な空間で満たされています。空間の中では、排他律の問題、つまり、『物質』同士の衝突の問題に悩まされる事なく、自由に、その存在状態を変更可能です。
なお、現代の物理学者は、排他律が成り立っている対象を『物質』、それが成り立っていない対象を『空間』と呼んでいます。そして、「存在状態が変更される原因」の事を、『エネルギー』と呼んでいます。エネルギーが関与すれば、存在状態が変化します。逆に、存在状態が変化した結果を観察して、「エネルギーが関与したから」と理解しています。
だから、(存在状態の変更を目指して)制御にはエネルギーが必要になります。そこに、(何らかの利用可能な)エネルギーの流れが存在している必要があります。エネルギーの流れを制御して、存在状態を変更しています。
実際、そこにエネルギーの流れが存在していれば、生命は、何処にでも存在可能なように見えます。その流れを利用して、自らの存在状態を変更しています。
『エネルギー』と『存在状態の変更』は同義語です。一枚のコインの裏と表です。「存在状態を変更する原因」を「エネルギー」と呼ぶか、「存在状態が変更された結果」を「エネルギーが関与したから」と呼ぶかの違いです。
配線によって、制御用論理回路を実現する方法を、ワイヤードロジックと呼んでいます。
これに対して、プログラムによって論理回路を実現する方法を、ソフトロジック、又は、マイクロプログラムと呼んでいます。
主に、CPU(中央処理装置)の設計手法を説明する為に使わてれいます。
要は、昔のように、配線によって制御回路を作るか、最近のコンピュータのように、プログラムによって制御回路を作るかの違いです。
ちなみに、昔のボイラーの制御盤は、真空管もトランジスタも使っていませんでした。もちろん、コンピュータも使っていませんでした。数個のリレーとタイマーとセレン光電管の組み合わせだけで作っていました。信じられないでしょうが。(それで目的は達成していました。)
物理学理論の場合、成功している理論には、共通の特徴があります。思考形式や、数学的記述形式が、対象性を持っていることです。
例えは、ニュートン力学の場合、時間の流れについて対称性を持っており、未来に向かって流れても、過去に向かって流れても、それなりに、辻褄があうようになっています。
アイシュタインの相対論の場合は、時間と空間が対象性を持っており、形式的に、時間と空間を入れ替えても、それなりに成りったっています。
ここでも、新しい思考形式を導入する場合は、極力、対称性を持つように、心がけています。『生物』という概念と、それに対立する『環境』という概念が対称性を持つように、つまり、生物と環境を入れ替えても成り立つように、思考形式を整理しています。
と、言うよりは、対称性を持っていない思考形式は、まだ、未完成です。もっと、もっと、常識に対する執着心を、削ぎ落とす必要があります。
「思考形式が対称性を持っていないのは、常識に拘っているからです。見えている常識に執着し、呪縛されているから。」と、思っています。