2022/08/04 うつせみ

鏡に映した文字の左右が反転する原因が解りました。

原因は全く意外でした。
鏡を見る為に、回れ右で、姿勢を変えたことが原因でした。
この時に、(人間から見て)(地面の)左右が入れ替わったのです。
鏡は文字を反転させていませんでした。
そして、これが同時に、上下が逆転しない理由でもありました。

1. はじめに

鏡問題を解く必要があったので、解いてみました。

鏡に文字を映すと、左右が反転します。しかし、上下は逆転しません。なぜでしょうか?
なぜ、左右は反転するのに、上下は逆転しないのでしょうか?
(なんか変。論理的に、しっくりこない ...........)

その結論は、意外にも、「映す前に、既に、左右が反転していた。」でした。
鏡が原因ではなかったのです。鏡は像を反転させていませんでした。既に反転した物を、正直に映していただけでした。
そして、ここに上下が逆転しない理由も隠されていました。

分かってしまえは、このトリックは単純でしたが、今までの先入観が強すぎて、今もって、(実感として)しっくりきません。それ程に、「鏡に映した文字は反転する。」という先入観は強力だったのです。

実際に検証する場合は、鏡ではなくて、人間の姿勢の変化を注意深く観察して下さい。



検証作業

「文字が左右反転するのは、鏡に映す行為が原因だ。」という先入観を持っていました。そこで、実際に、紙に矢印を描き、鏡に映す思考実験を繰り返しました。でも、意外な事に、先入観に反して、思考実験では矢印は反転しませんでした。

そこで、実際に壁に「文字と矢印」の両方を書いた紙を貼り実験しました。でも、やはり(矢印は)反転しませんでした。思考実験の結果通りでした。思考実験は間違っていませんでした。

ところが、文字は反転していました。思考実験でも、実際の実験でも(矢印は)反転しないのに、なぜか、文字だけが反転して見えたのです。一瞬、頭が真白になりました。何が起こっているのか理解できなかったので。この矛盾に、三日間、悩みました。
この矛盾の原因は、後になって判明しました。詳細は文字と矢印の違いを参照下さい。

そこで、「鏡に映して見る行為」を(手順を漏れなく箇条書きにして)詳細にチェックしました。実際に、その手順を図でも再現しました。

北向きの壁に、文字 C と、右向きの青矢印を書き、それを鏡に映してみました。位置関係は、下図の「配置図で検証」を想定しています。

ポイントは、二つの座標系を厳密に使い分ける事です。

1. 地面基準の「東西南北」(絶対座標系)
2. 人間基準の「左右上下」(相対座標系)


ヒント:地面に置いた物は、人間の姿勢によって、左右上下が変わります。相対的方位です。

地面に固定された物の東西南北は永遠に不変ですが、しかし、左右は体の向きによって変わります。青矢印は、(体の向きによって)右向きや左向きにコロコロ変わっています。

そして、重要な事は、人間の視覚イメージは、この体の向きに依存します。常に、「人間には、どう見えるか?」が問われています。
つまり、「左右上下」(相対座標系)が問われます。「東西南北」(絶対座標系)は問われません。

まず、北壁に向かい文字「C」と青い右矢印を書きます。

北壁に向かい文字を書く

壁に向かい文字を書く
舞台装置:壁は北向きです。だから、この壁と向き合っている人間の顔は南を向いています。
女の子の視点です。背後に立って同じものを見ています。
北壁に向かい文字「C」と青い右矢印を書きます。
顔を南に向けた時の右手は、西側になります。
青矢印は右向き(西向き)です。(円が切れている)文字 C の穴は、右(西)側です。青矢印とCの穴の向きは一致しています。
ちなみに、女の子の髪結びは左側です。
赤矢印は上方向です。上下が反転しないことを確認する為に描いています。

これを、配置図上に再現します。図は、上が北です。
この文字と矢印を、背中側にある鏡に写して、その映像を観察します。
人間も含めた考察になっています。あくまでも、「人間に、どう見えるか?」が問われているからです。人間の存在を排除した客観的思考は無意味です。

配置図で検証

配置図で検証
北向きの壁に、文字「C」と青い右矢印を書きます。顔は南を向いています。

鏡を見ている女の子は、(鏡を見る為に)回れ右して、顔を北に向けた時のイメージです。南を向いて書き、北を向いたので、既に、左右は反転しています。文字も左右が反転しています。

しかし、地面基準で見たら、青矢印は最初から西向きのままです。
鏡の中の青矢印も、やはり、西向きです。東向きに反転していません。
鏡自体は像を反転させていません。

(重要)ポイントは、東西南北(絶対座標)で理解することです。地面に固定された物は、人間の姿勢が変わっても、常に不変に保たれます。壁は、地面に固定されています。矢印は、常に西向きです。鏡の中の矢印も西向きです。

一方、左右は、(人間を基準にした方位なので、)体の向きによって変わります。180度「回れ右」すると、地面に固定された物の左右は反転します。つまり、文字は反転して見えます。

これが、鏡問題の混乱の原因です。南に向いて文字を書き、鏡に映っているイメージを確認する為に「回れ右」して顔を北に向けた時に、(人間から見た)左右が反転しました。

なんと、驚くべき事に、「壁に文字を書く時」と、「その壁の文字を、鏡に映して見る時」で、「回れ右」で姿勢を180度変えていたのです。
この時に、左右が入れ替わったのです。
同時に、上下が逆転しない理由でもありました。
結論:絶対座標系と相対座標系の混乱が原因。でも、人間は、自分が絶対的基準だと思っている。

この姿勢が180度変わった時に、(人間から見た)青矢印の左右が入れ替わっていたのです。文字を書く時には青矢印は右向きだったのに、「回れ右」したら左向きに(俺様の了解もなしに勝手に)変わっていたのです。
それは、丁度、紙を裏返すのと同じ状況でした。透き通った紙に文字を書き、裏返して、裏側から見ると文字は左右が反転しています。それと、同じ理屈でした。紙を裏返す代わりに、人間を裏返していたのです。

先入観に反して、(思考実験の通り)鏡自体は像を反転させていませんでした。

嘘だと思ったら、実際に試してください。ポイントは、鏡ではなくて、人間の姿勢の変化に注目することです。
薄い紙に文字を書き、紙は動かさないで、人間が紙の裏側に回って、裏側から紙を見て下さい。この時、紙の裏側を見る為に、姿勢を180度回転させています。この結果、透けて見える文字は、左右が反転します。絶対座標(東西南北)は人間が姿勢を変えても変化しませんが、人間基準の相対座標(左右上下)はコロコロ変わります。


上下が反転しない理由

そして、ここに上下が逆転しない理由も隠されていました。
「回れ右」は水平面での回転運動です。だから、左右が反転しました。でも、垂直方向には姿勢を変えていません。始めから終わりまで、頭は上で、足は下のままです。逆立ちはしていません。上下の姿勢は変えていないので、(鏡に映った像の)上下は逆転しませんでした。
「鏡像は、左右は反転するが上下は反転しない。もし、鏡が原因なら、左右が反転した時に、上下も逆転する筈だ。」という素朴な疑問の答えでした。

全ては、「回れ右」が原因でした。鏡に映した時に反転した訳ではありませんでした。(回れ右して)左右が入れ替わった結果を、鏡は正直に映したので、結果的に、人間には(鏡に映った文字の)左右が反転したように見えただけでした。思考実験の通り、鏡は左右を反転させていませんでした

この事は、地面を基準とした「地面座標系(東西南北)」と、人間に固有の「人間座標系(左右上下)」を厳密に区別して思考する事によって、明らかとなりました。この二つの座標系を充分に区別せず、混同していた事が、鏡問題のトラブルの原因でした。

そこで以下では、この二つ座標系を厳密に区別しながら、詳細な説明を進めます。

重要
鏡問題には、三つの問題が隠れていました。
 1. 姿勢を変えたことで左右が反転する「回れ右
 2. 鏡に映っている相手の立場に立った「情報の補正
 3. 人間が生きる事と関連した「文字と矢印の違い
の三つです。

注)以上の内容が理解できた方は、これから先は読む必要がありません。ただ、本質的に全く異なった事を述べている「情報の補正」と「文字と矢印の違い」は、お読み下さい。

注)折り紙の「騙し船」
このトリックは、折り紙の「騙し船」を連想します。「帆を摘まんでいる筈が、目を瞑っている間に、いつの間にか船体を摘まんでいる」遊びです。小さな子供相手の時は、結構受けます。自分も(小さい頃)からかわれた記憶があります。

2. 地面座標系と人間座標系

以下から(半分退屈な)詳細な説明の始まりです。
およそ鏡問題とは関係なさそうな話題から始めます。
本題に入る前に、準備作業が結構長くなります。

鏡問題を解く為には、二つの座標系を厳密に区別する必要があります。「地面座標系」と「人間座標系」の二つです。この二つの座標系を区別せず、混同している事が鏡問題の混乱の原因です。

地面座標系」は、地面を基準にした方位です。方位を表示する記号は「東西南北」を使います。この地面を基準とした座標系は絶対的です。実験の間、変わりません。

人間座標系」は、人間を基準とした方位です。方位を表示する記号は「左右上下」を使います。この座標系は、人間に固定されているので、姿勢を変えても変わりません。右肩は(何時まで経っても)右肩です。

でも、厄介の事に、地面に対してはコロコロ変わります。相対的です。
顔を北に向けた時、右手は東側ですが、「回れ右」をして南側を向くと、右手は西側になります。東西が入れ替わります。

地面に固定された物は、人間が姿勢を変えると(人間から見て)左右が入れ替わります。
理解のポイントは、常に「地面座標系」と「人間座標系」の対応関係を意識する事です。
地面に対する絶対的位置関係を、常に明確に把握しておく事が大切です。

そして、「それが、人間にはどう見えるか?」に変換する事です。
厄介なことに、人間は、「自分が絶対的基準だ」と思い込んでいます。自分中心に、物事を判断しています。

座標系基準表示記号備考
地面座標系地面東西南北
E,W,S,N
(絶対座標系)
地面を基準にして方位を表現
地面に固定した物は変わらない。
人間座標系人間左右上下
L,R,U,D
(相対座標系)
人間を基準にして方位を表現
姿勢が変わる毎に、地面に固定した物の右左が変わる。
人間は、自分中心に物事を判断します。

3. 舞台の配置図

実験は、「壁に文字を書き、それを鏡に映して見る事」です。
その為に、実験の舞台は、下図のような配置図を想定します。

常に、二つの座標系を明確に区別します。「地面座標系」と「人間座標系」です。
この二つの座標系を明確に区別して自覚していない事が、鏡問題の混乱の原因です。だから、一番最初に、この重要な「実験の舞台」の位置関係を明示します。

配置図

配置図
壁は、北向きに、東西方向に配置します。
鏡は、壁の北側に壁と平行に配置します。
人間は、壁と鏡の間に配置します。

注)地面座標系は、「東西南北」で表記します。地面が基準です。
注)人間座標系は、「左右上下」で表記します。人間が基準です。

壁は、北に面し、東西に伸びています。つまり、北壁です。
壁の北側に、それと平行に鏡を配置します。壁に書いた文字を映す為です。
文字を書く人間は、壁と鏡の間に配置します。
最初、人間は壁に文字を書く為に北壁と向き合っています。だから、顔は南を向いています。

この人間が鏡を見る為には、「回れ右」して、姿勢を180度回転させる必要があります。顔を北に向ける必要があります。

これが頭に入っているかどうかが、鏡問題が理解できるかどうかの運命の分かれ道になります。
思考実験の枠組みの中に、人間も含める必要があります。
人間の存在を排除した客観的思考ではなくて、人間も含めた主観的思考が大切です。今問題になっているのは、人間の主観なので。「人間には、どう見えるか」が問われているので。
観測装置(人間)も含めて総合的検証が必要です。一般的に観測装置自身も、(観測の為に)現象に影響を与えてしまうからです。そもそも、現象に影響を与えないと、観測行為自体が成り立ちません。

4. 壁に書いた文字を鏡に映して検証する

準備ができたので、実験の開始です。

実際に、壁に文字を書き、それを鏡に映して、その結果を検証します。
この作業は、幾つかの工程に分かれます。

1. 手順1:壁に向かい、文字を書く。
2. 手順2:鏡の方に体の向きを変える。(鏡に映ったイメージを検証する為)
3. 手順3:実際に鏡に映った結果を検証する。


手順1:壁に向かい、文字を書く。

壁に文字を書く為に、壁の方を向きます。
この時、顔は南を向いています。

壁に、アルファベットの「C」と、右向きの青矢印を書きます。

参考に、上向きの赤矢印も書きます。今回の実験には、ほとんど関係ありませんが、念の為、書いておきます。このような原則に忠実な用心深さは、後々、役立つ事があります。

北壁に向かい文字を書く

壁に向かい文字を書く
北壁に向かい文字を書きます。
(北壁と向き合っているので)顔は南を向いています。
青矢印は西向き(右向き)です。
ちなみに、女の子の髪結びは左側です。
&deco(#888888){赤矢印は上方向です。上下が反転しないことを確認する為に描いています。}

「C」の穴が開いた方向と、青矢印の方向は同じです。
この関係は、後々、確認に必要ですので覚えておいてください。



手順2:鏡の方に体の向きを変える。

壁に書いた文字を鏡に映して見る為に、「回れ右」をして鏡の方に体の向きを変えます。
正面に鏡が見えています。
この時、顔は北を向いています。
これで、鏡を見る準備ができました。

鏡の方に体の向きを変える。

鏡の方に体の向きを変える。
「回れ右」して、鏡の方に向きます。
顔は北を向いています。
これで、青矢印の(人間基準での)向きも、左向きに変わりました。

この段階で、既に、『トンデモナイ事』が起こっているのですが、しかし、まだ、誰も気が付いていません。
人間は、後ろに目が付いていないからです。つまり、後ろは見えていないからです。

まだ、相変わらず、「青矢印は右を向いている筈」と信じています。
でも、もう既に、青矢印は左向きに変わっています。左右が反転しています。

そこで、その『トンデモナイ事』を理解する為に、「参考1」と「参考2」の手順を追加します。この参考手順は、本質的問題ではありませんが、理解に役立ちます。



参考1:壁の後ろに回ります。

後ろの状況を確認する為に、(顔を北に向けたまま、姿勢は変えないで、後退りして)壁の後ろに回ります。
この時、顔は北を向いたままです。「手順2」の時と、人間の姿勢は変わっていません。

壁の後ろに回ります。

壁の後ろに回ります
壁の後ろに回ります。
体の向きはそのままです。顔は北を向いています。

何も変わっていないように見えますね。
なお、壁は、半透明の摺りガラスを想定します。


参考2:女の子視点で見ると。

そこで、女の子の後ろに立ち、壁の裏側から見たいイメージを、女の子の視線で再現します。
この時、相変わず、顔は北を向いています。変わっていません。

視線の一番奥には鏡があるます。
その手前に壁があります。
一番手前に、女の子の背中があります。

女の子の視線を再現

女の子の視線を再現
女の子の視線で見ます。
視線の一番奥には鏡があるます。
その手前に壁と文字、青矢印があります。
一番手前には、女の子の背中が見えます。

あれっ!。
もう既に、文字と青矢印が、反転している。青矢印は左を向いています。

そうなんです。
鏡に映す前に、もう既に、反転していたのです。
鏡を見る為に、「回れ右」して、姿勢を180度回転させた為に、左右が入れ替わったのです。

諸悪の根源は、「手順2」で「回れ右」をして、姿勢を180度回転した事でした。
これで、(地面に対して)「人間座標系」から見た「左右」が反転してしまったのです。
反転した図形を鏡に映したのだから、反転して見えるのは当たり前です。
これを、明示的に確認する為に、ワザワザ、青矢印を描きました。
反転しても、C の穴の方向と青矢印の方向は一致しています。
注)「地面座標系」で見たら、青矢印の向きは変わっていません。最初から、西向きのままです。

先入観

人間は、自分の描いたイメージが、先入観として、強く頭にこびりついています。
姿勢を変えても、この先入観は変わりません。反転した事など、夢にも思っていません。
実際、人間は後ろに目が付いている訳ではありませんから、姿勢を変えた後の結果は見ていません。姿勢を変える前のイメージが(先入観として)こびりついているだけです。

だから、「鏡が文字を反転させている。」と思い込んで、「鏡に映す作業」ばかりを検証してきました。だから、答えが見つからなかったのです。
答えは、「思い込み」の中にはありませんでした。


手順3:実際に鏡に映す行為を、配置図上で検証

実際に、鏡に映す行為を、配置図上で検証します。

地面座標系上(東西南北)では、「C」の穴と、青矢印の向きは不変に保たれています。
青矢印は、西向きです。
鏡に映ったイメージも西を向いています。

でも、人間座標系だと、「回れ右」で姿勢を変えると、矢印の向きは反転しています。
今問題となっているのは、「人間には、どう見えるか」です。
壁に右矢印を描いても、「回れ右」して鏡の方を向くと、左矢印に変わっています。
これが、鏡に映すと左右が反転する原因でした。つまり、反転の原因は、「回れ右」でした。

配置図で検証

配置図で検証
「地面座標系」で見たら、青矢印は最初から西向きです。
鏡の中の青矢印も、やはり、西向きです。
鏡は像を反転させていません。

(重要)「壁に書く時」と、「鏡を見る時」で、「回れ右」で姿勢が反転しています。
これが、鏡に映った文字の左右が反転した原因でした。(人間基準で)矢印の向きが反転しています。
そして、上下が逆転しない理由でもありました。上下方向には姿勢を変えていません。つまり、逆立ちしていません。

この図が、みんなの悩んできた舞台でした。
「この図の中に謎が隠されている筈だ」と思い込んで、みんな試行錯誤を繰り返してきました。

ただし、人間の存在は無視して。
今までの検証では、上の図から、人間の姿は消えていました。考慮されていませんでした。大切な事は、「人間には、どう見えるか?」だった筈なのに。先入観に従って、「鏡の真実」を、(人間の存在とは無関係に)客観的に解明する事に集中していました。

「地面座標系」(東西南北)で見る限り、鏡は左右を反転させていません。
青矢印の向きは、常に、西を向いています。
鏡の中の青矢印も西向きです。

結果は、反転した図形を鏡に映したから、鏡は正直に、それを映しただけでした。

この検証実験を簡単に再現する方法

壁は透明でないので、壁の後ろに回っても何も見えません。
そこで、壁の代わりに、紙を使います。紙なら、紙の後ろに回り込む事は簡単ですから、再現実験も簡単です。薄めの紙に、濃い目のマジックで書けば、紙の裏側からでも見ることができます。

上の配置図と同じ状況で、紙に「文字と矢印」を書き、鏡と紙の位置関係が変わらないように紙は動かさないで、体だけを動かして、紙の後ろに回り込みます。こうすれば、紙の裏側と鏡を同時に見ることが可能となります。

重要なポイントは、この時、紙の裏側を見る為に、体を180度回転させている事です。この体を180度回転させた時に、左右が入れ替わります。

この状況は、紙を裏返した場合と同様です。要は、紙を裏返すか、人間を裏返すかの違いだけでした。今回の実験では、(紙は固定したまま、回れ右で)人間を裏返しています。



配置図での検証のまとめ

答えは、全く意外なものでした。

  1. 鏡は、文字などのイメージを反転させて映していなかった。
  2. 最初から、反転したイメージを映したから、鏡に映ったイメージも反転していた。
  3. 諸悪の根源は、「壁に文字を書く時」と、「鏡を見る時」で、「回れ右」で姿勢を180度回転させていた事でした。この時に、(人間から見た)「左右」が入れ替わりました。

注意)奥行は反転している。

鏡は確かに左右は反転させていませんが、奥行は、その仕組み上、反転します。
鏡に近づくと、鏡に映った自分も鏡の方に向かって近づいてきます。その移動方向は逆転しています。

ちなみに、念の為に、右方向に動くと、鏡の中の自分も(自分から見て)右方向に動きます。動く方向は(地面座標系に対して)同じです。

5. なぜ、「上下」は反転しないのか?

文字を鏡に映した時、左右(水平方向)は反転します。でも、上下は反転していません。なぜでしょうか?

回れ右」した事が、文字の左右が反転した原因でした。
この疑問の答えも、この行為の中に隠されいます。

「回れ右」は、水平面での回転運動です。180度、顔の向きを変えると、地面座標系に対して、右左が反転します。顔が南向きなら右肩は西側にありますが、「回れ右」で北を向くと右肩は東側になります。壁に書いた文字や青矢印は、地面座標系に固定されていますから、「回れ右」すると、「左右」は入れ替わってしまいます。

でも、垂直方向は変わりません。「回れ右」の前と後で、「頭は上、足は下」の関係は変わっていません。「上下」の姿勢が変わらなかったから、「上下」(垂直方向)のイメージも反転しなかったのです。

もし、「逆立ち」すれば、この姿勢変更によって、(人間から見た)「上下」も反転します。
反転の原因が、人間の姿勢変更にあるからです。

6. 顔に直接文字を書いたらどうなる?

誰かに、顔に直接文字を書いて貰って、鏡の前に立ったらどうなるでしょうか。
結果は、「文字は反転する」です。

自分に向かって、自分の顔に文字や矢印を書いた誰かにとって矢印は右向きですが、この時点で、既に、自分にとっては、左向き矢印になっています。二人は、向く合っているからです。向き合った二人の左右は逆になっています。自分の右側は、相手にとって左側です。

だから、顔に文字を書くという行為は、先ほどの「手順2」と同様な状態になります。従って、この実験は、先の実験の「手順2」以降と同じになります。
当然、反転した像を鏡に映すので、鏡に映った結果も反転しています。

顔に直接文字を書く。

顔に直接文字を書く。
顔に直接文字を書く行為は、先ほどの実験「手順2」と同じ状態です。
従って、鏡の映った文字も反転します。

ポイントは、第三者が南を向いて、(北を向いた)自分の顔に書いた事です。

7. 人間の代わりに、壁を動かしたらどうなる?

今までの実験では、鏡と壁は固定して、人間を「回れ右」で裏返しました。
では、逆に、鏡と人間を固定して、壁を裏返したらどうなるでしょうか?

もう、結果は、ある程度予測できますよね。
人間と壁の相対関係が裏返るので、文字は反転する筈です。
本当でしょうか。
実際にやってみます。壁を動かす訳にはいきませんから、壁の代わりに紙を使います。
この実験の方が、日常の鏡問題の体験に近いと思われます。

日常の体験では、
机の前に座り、机の上に白い紙を置きます。そして、そこに文字を書きます。
その紙を持って鏡の前に移動し、(文字を書いた)紙を鏡に映していると思います。

実験は、二段階に分かれます。
第一段階は、鏡も人間も紙も、全く動かさない実験です。
第二段階は、紙のみを裏返した実験です。鏡と人間は固定したままです。



第一段階は、鏡も人間も紙も、全く動かさない実験です。

鏡と紙が同時に見える位置に移動します。
まず、鏡の前に立ちます。目の前には、鏡が見えています。
この状態で、紙を前にかがげ、その紙に文字を書きます。
こうすれば、(姿勢を変えずに)鏡と紙を同時に見ることができます。
そして、鏡に映った像を確認します。
なお、この実験では、鏡も人間も紙も、全く動かしません。

人間から見たイメージは下図のようになります。
一番奥に鏡があり、その手前に紙があり、一番手前に、人間の背中が見えている状態です。
この実験では、紙の裏側を、鏡に映しています。

鏡の前に立ち、目の前の紙に書いたら

鏡の前に立ち、目の前の紙に書いたら
鏡の前に立ちます。
そして、紙をかざし、文字を書きます。
鏡には、紙の裏面が映っています。
結果は、文字は反転しません。

配置図は下記のようになります。

配置図

配置図
上の作業を配置図上で再現します。

結果は、このような位置関係では、文字は反転しません。
人間が見ている紙の表と同じ文字のイメージが、そのまま鏡にも映っています。
配置図上も、紙の裏面が、そのまま映されるので、人間のみたままが映っています。
多少、裏面なので、輪郭やコントラストが薄くなっていますが。

重要:この実験では、鏡も人間も紙も、全く動かしていません。


第二段階は、紙のみを裏返した実験です。鏡と人間は固定したままです。

それでは、この状態で、紙だけを裏返して、紙の表面を鏡に映してみます。
人間には紙の裏側が見ています。鏡には、紙の表側を映しています。
その見え方は、下図のようになります。

紙をうらがえしたら

紙をうらがえしたら
上の実験で、紙を裏返してみます。
紙の表面が鏡に映っています。
人間は、紙の裏面を見ています。

配置図は、下記の通りです。

配置図

配置図
上の実験を、配置図上で再現します。

結果は、文字が反転しています。
人間と紙との相対的位置関係(左右)が入れ替わった為です。
それを、人間視点で再現している為です。
なお、人間が見ている紙のイメージと、鏡に映っているイメージは(今回も)一致しています。

これが、通常の鏡問題です。
机の上で、白い紙に文字を書き、その紙を持って鏡の前に移動し、その表面を鏡に映している状態です。

この実験でも、左右が入れ替わったタイミングは、「鏡に映した時」ではなくて、「人間と紙の相対関係が変化した時」、即ち、今回は「紙を裏返した時」でした。だから、(今回も)上下は逆転しませんでした。

8. 鏡に向かい、右手を上げたらどうなる?

本質的に、今までとは全く異なった異常事態に直面しました。
今までの話が、全く通用しません。

今回の実験では、地面に固定された物も、人間の姿勢も変えていません。何も物理的には変化していません。今までの実験のように、物理的変化が錯覚を生み出している訳ではありません。



実験開始です。
鏡と向き合い、自分の姿を鏡に映します。
そして、右手を上げたら、鏡の中の自分はどう動くでしょうか。
もちろん、左手を上げます。(<< この常識が異常 )

鏡に自分の姿を映して、右手を上げる

鏡に自分の姿を映して、右手を上げる
鏡に自分の姿を映して、右手を上げます。
鏡の中の自分は、どちらの手を上げるでしょうか?
重要)今回の実験では、体の向きを変えていません。

鏡と向かい合います。すると、鏡の奥に自分の姿が映ります。
ここで右手を上げます。そうすると、鏡の中の自分も、(自分から見て)右側の手を上げます。地面座標系基準でも、東側の手を上げています。(物理的に)像は反転して映っていません。
実際、東側に移動したら、鏡の中の自分も、東側に移動します。左右は反転していません。

注意)ただし、奥行は反転しています。自分と、鏡の中の自分は、顔を突き合わせています。鏡に向かって歩くと、鏡の中の自分も鏡に向かって歩きます。移動方向が逆になっています。

でも、「鏡の中の自分は左手を上げた。」「鏡の中の自分は、左右が反転して映っている。」と理解します。今回は姿勢も変えていません。「回れ右」が原因でもありません。
なぜでしょう?

ここで、今までとは本質的に全く異なった異常事態が起こっています。

地面座標系では、東側の手を上げたら、鏡の中の自分も東側の手を上げています。
地面基準の絶対座標では、像は反転していません。
でも、人間は、なぜか「左手を上げた」と解釈しています。「鏡の中の自分は、左右が反転して映っている。」と理解しています。

なぜでしょうか?。絶対的基準である地面座標系では反転していないので、物理的に反転して映している訳ではありません。不思議です。どこがどうなっているのでしょうか。

相手の立場に立った情報の補正

これは、どうも人間の知能の高さが原因のようです。
人間は、「自分の立場」だけでなく、「相手の立場」に立って考える事ができます。

鏡の中に映っている人物基準では、「東側の手」は、「左手」です。無意識に、このような「相手の立場に立った情報の補正」が行われていたようです。

この状況は、二人が向き合って、両手を取り取り合った時と同じ状況です。自分の右手は相手の左手を、左手は右手を握ります。向き合った相手の立場に立って左右を判断することも出来ます。

向かい合って両手を取りあう

向かい合って両手を取りあう

さらっと述べていますが、何気に重要な気がします。

結論:「相手の立場に立った情報の補正」が行われていた。

ひょっとしたら、(鏡の場合、)奥行が反転している事が、つまり、(自分と鏡の中の自分が)顔を突き合わせている事が、このような情報の補正を、促しているのかな~?。原因は、思っている程、単純でないのかも。


参考)左利きの悲しい性

自分は、実は左利きです。だから、左手右手の判断が瞬時にできません。

小一の頃、先生から「石を投げる手が右手です。」と教えられました。自分は、瞬時に、この知識をインプットしました。ところが、自分は左利きだから、石は左手で投げていたのです。後になって、この事実を知って混乱してしまいました。でも、一度覚えたことは、二度と上書きされることはありませんでした。

だから、「右手を上げろ。」と言われても、瞬時に反応できなくて、長い長い変換作業が必要です。
最初の先入観は、如何ともし難いものがあります。「(1)石を投げる手が右手だと教えられた。(2)でも、これは間違っていた。(3)僕は左利きだ。(4)石はこちら側の手で投げている。(5)だから、右手はその反対側の筈だから、(6)多分、こちらの手だろう。」と、いつも考え込んでいます。今でも、この六ステップの変換作業を行っています。悲しいことに、自分にとって、「左右の情報の補正」は日常でした。

この悲しい性が、皮肉なことに、この鏡問題の作業では役立ちました。右利きの人だったら、常識としてそのまま受け止めている事実を、いちいち立ち止まって考え込んでいます。そもそも、「左、右」に根本的不信感を持っているのです。

9.文字と矢印の違い

鏡問題には、もうひとつ問題が隠れていました。
最初に「検証作業」を行った時に、突き当たった戸惑いの原因です。

文字も矢印も、鏡に写したら左右が逆転します。そのように見えます。だから、文字は強い違和感を感じます。
でも、矢印は全く違和感を感じませんでした。すんなり受け入れました。一瞬、何が起こっているか理解出来ずに混乱してしまいました。なぜ文字は反転するのに、矢印は反転しないのか、そう感じてしまったのか、その理由です。

どうも文字と矢印では、生きる意味が異なっている為のようです。

全ての哲学的問いは、最終的には、「人間という動物の生きる事との接点」を探し求めています。「それは自分の生きる事と、どう関わっているのだろうか?」と。この(関わりの)接点を探し求めています。
この接点が異なっていたのです。つまり、生きる意味が異なっていたのです。矢印は空間認識の中で理解されていますが、文字は常に顔の正面で理解されています。

矢印は空間認識の中で理解されています。
日常生活では、地面や壁に描かれ、人間の行動を指図しています。従って、人間の姿勢の変化の影響を受けません。前を向こうが後ろを向こうが、地面に対しては不変に保たれています。
だから、回れ右をして左右が反転しても、地面との関係は変わりませんから、(空間認識が正常に保たれ)違和感も感じません。すんなり抵抗感なく受け入れられてしまいました。
(矢印は、地面という絶対座標系に固定された情報)

一方、文字は常に顔の正面で理解しています。
寝転がっていようが、立っていようが、座っていようが、前を向いていようが、後ろを向いていようが、常に顔の正面に掲げて読んでいます。(姿勢の変化に)不変に保たれています。しかし、地面との関係は一定に保たれていません。だから、回れ右して左右が反転すると、読めなくなって違和感を感じてしまったようです。
(文字は、人間という相対座標系に固定された情報)

生きる意味
記号理解備考
矢印空間認識の中で理解地面座標系に固定された情報
絶対座標系の事象
文字常に顔の正面で理解人間座標系に固定された情報
相対座標系の事象

文字と矢印では、「人間の生きるという行為との関係」が異なっていたのです。

嘘だと思ったら、実際に試してみて下さい。

  1. 最初、矢印だけを書いた紙を鏡に写してみて下さい。(文字は書かない。)
  2. 次に、文字だけを書いた紙を鏡に写してみて下さい。(矢印は書かない。)
  3. 二つの実験の印象の違いを実感して下さい。
  4. そして最後に、文字と矢印の両方を書いた紙を鏡に写してみて下さい。一瞬、頭が分裂します。

10.まとめ

「鏡に映った像は、左右が反転する」という先入観には、本質的に全く異なった三つの原因が隠されているようです。「回れ右」と、「情報の補正」、「文字と矢印の違い」の三つです。

鏡に映った像が反転して見える原因
No原因説明
1回れ右回れ右」した為に、結果、地面に固定された物の「左右」が入れ替わってしまった。
2情報補正鏡の中に映っている人物の立場に立って理解した為に、「情報の補正」が起こってしまった。
3文字と矢印文字と矢印では、「人間が生きる」という行為との関係が異なっていた。
矢印は空間認識の中で理解していますが、文字は顔の正面で理解しています。

何れにしても、結果は(期待した)先入観とは大きく異なった意外なものでした。

鏡自体は、像を反転させていなかったのです。「鏡は像を反転させる。」は先入観だったのです。原因は、それ以外のところにありました。しかも、三つも 。。。。。

11.余談:脳は環境の逆関数になっている。

この鏡問題に取り組んだ事情です。

脳の構造を制御工学の理論を使って記述すると、脳は環境の逆関数になっている事が解りました。

だから、動物の脳のように、ワイヤードロジックによって制御システムを構成した場合、その空間配置も逆転する筈と予測されました。実際、人間を含めた動物の脳は左右が反転しています。蛇の赤外線を感知するピット器官も交差しています。(体の)右側の視覚情報は大脳の左側に、左側は右側に投影されます。左右の視覚情報の投影が交差しています。
(動物の脳の左右が逆転していることには、明確な理由が隠されています。単なる偶然のイタズラではありません。脳は環境の逆関数だからです。)

鏡に映った文字が反転するのも、「この(左右が反転している)脳の構造が原因なのでは?」と、色めき立ちました。それが証拠に、上下は逆転していません。
そこで、この問題を解いてみる事にしました。ひょっとしたら、(壁を乗り越える)思いもよらない収穫が得られるかもしれないと思われたからです。

しかし、結果は全くの予想外でした。
ただの単なるトリックに過ぎなかったのです。鏡に映す前に、既に、文字は反転していました。それに、(みんなが)気付いていなかっただけでした。
まるで、折り紙の「だましぶね」に騙された時のようでした。

この作業は、このような事情によるものです。
見込みが外れて、想定した結果が得られなかったのは残念ですが、脳の構造とは関係なかった事が解っただけでも収穫です。
(それでも、見込みが外れて、返す返すも残念......せっかく突破口が見つかると期待していたのに。)