5.3 動物実験
未知の状況に直面した場合の、動物の行動について考察します。
本来、動物にとって絶対に必要なのは、第一システムのみであつて、第二システムは必ずしも必要ではありません。事実、多くの動物達は、第二システムを持っておりません。
この本来必要な第一システムが正常に機能するためには、そこにたくさんのプログラムが組み込まれている必要があります。
しかし、現実問題として、この組み込まれているプログラムだけで、全ての状況に対応することは不可能です。時には、全く新しい状況に直面して、身動きが取れなくなってしまう場合もあります。
このような場合に、第一システムだけの動物と、第二システムも持った動物の間には、どのような行動の差が生じるのでしょうか?
第一システムだけの動物の場合
第一システムだけの動物の場合、多くの動物実験から言えることは、彼らは突然、肉体を使った探究反射(試行錯誤)行動にでます。
例えは、ネズミを迷路に置いた場合、まず、やってみます。色々、デタラメに行動してみます。そして、偶然に、その状況を解決します。
これを何度も何度も繰り返しているうちに、しだいにその状況を解決するためのプログラムを身に付けていきます。
つまり、探求反射(試行錯誤)を繰り返しながら、体験学習によって、新しいプログラム(習慣)を身に付けていきます。
第二システムも持った動物の場合
一方、我々人間のように第二システムを持った動物の場合には、どうでしょうか。
もちろん、突然行動を起す人もいますが、多くの場合は、いったん立ち止まって考えます。
まず、まわりの状況をよく観察して、あれやこれやと考えます。あれやこれやと考えて、頭の中で解決策を見いだそうとします。そして、解決策が見つかると、それに従って、現実の肉体行動を起こします。
このあれやこれやと考える我々の行動を、よく観察してみて下さい。それが、いったい何を意味しているのか。
頭の中に状況を想定して、自分がある行動をとった場合、どのような結果が生じるのか、色々な場合について考えています。そして、その中からベストな方法を選択しようとしております。
状況を想定して、ある行動をとった場合の結果を予想する。それを、色々行なって、その中からベストな方法を選択する。そして、その選択されれた方法に基づいて実際の肉体行動を起こす。
この過程は、前の第一システムしかもたない動物達の場合と、どことなく類似しています。
第二システムの生物学的意味
注目すべきことは、第二システムをもった我々人間も、第一システムだけの他の動物達も、新しい行動のためのプログラムを作り出す原則は同じだということです。即ち、試行錯誤(探究反射)によって作っています。
しかし、使う器官は異なっております。第一システムだけの動物の場合、直接肉体を使った試行錯誤を行ないますが、我々の場合、頭を使います。第二システムを使った肉体の架空行動によって、即ち、架空の試行錯誤行為によって、必要とするプログラムを作りだしています。
作り出す原理、原則は同じであるにも係らず、使う器官は異なっております。これは、驚くべきことです。知性の象徴である『考える。』という行為が、実は、原始的な探究反射に過ぎなかったからです。
未知の状況に対応する為の新しいプログラムを作り出す原理 |
第一システム(ネズミ) |
肉体を使った探究反射によって、作り出している。 |
第二システム(人間) |
頭を使った架空の探究反射によって作り出している。 |
使っている器官は異なりますが、作り出している原理は同じです。
探究反射(試行錯誤)によって作り出しています。 |
以上のことから、次のことが結論されます。
システム名 |
目的 |
依存する感覚器官 |
該当する
動物の範囲 |
第一システム |
肉体の現実行動を制御 |
5感(眼耳鼻舌体) |
全ての動物 |
第二システム |
肉体の架空行動を制御 |
意識感覚器官 |
象や人間 |
つまり、第二システムは、第一システムの疑似組織であって、
肉体の現実行動に対応した、肉体の架空行動を制御するためのシステム系であると考えられます。
我々猿は、この第二システムを使ったシミュレーションによってプログラムを作り出し、そこでプログラムが完成したら、それに従って現実の肉体行動を起こしています。
この行動を、世間では「
考えてからやる。」とか、「
思考過程をともなった行動」と呼んでいます。