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8. 色即是空


   夢(ゆめ)世界も、現(うつつ)世界も、幻(まぼろし)世界も、意識にとっての知覚対象です。

   意識にとっての知覚対象は、我々の脳内部に作り出された架空世界です。そして、それは言葉と結びついています。即ち、それが言葉で表現できるということは、意識にとっての知覚対象であることを意味しています。

   金剛般若経

   このことを、金剛般若経は、『世界は世界にあらず。ゆえに、これを世界と名づく。』と表現します。
   「(あなたが意識知覚している)世界(という事象)は、(あなたが実体だと思い込んでいるような)世界ではない。だから、それには、世界(という言葉)が結びついているのだ。」という意味です。
   知覚している事象に、名前を付けることが出来るのは、その事象と言葉が同じ現象界に属しているからです。言葉は、意識にとっての知覚対象ですが、その事象も、また、意識にとっての知覚対象であるからです。
   同じ現象界に属していないと、結びつくことは不可能です。即ち、言葉で表現されている全ての事象は、脳内部に作り出された架空世界の事象です。

    般若心経

   般若心経は、『色即是空(しきそくぜくう)』と表現します。「あなたが意識知覚しているイメージ()は、あなたが思い込んでいるような実体ではない。っぽのものだ。」と表現します。

   『一切は空なり。』とも言います。
   「あなたが意識知覚している全てのもの(一切)は、実体のないものだ。」という意味です。
   この架空世界は、死と共に、消滅します。意識は、脳内部の架空世界に住んでいるので、肉体の死と共に、その自らの世界は消滅します。永遠の無の世界へと飲み込まれてしまいます。荒波が全てのものを持ち去るように、死は全てのものを、引き潮の勢いに任せて、持ち去ってしまいます。
   人々は、本能的に、そのことを恐れています。だから、せめて、消滅することのない実体だと思い込もうとしています。絶対的存在である(と思い込んでいる)神に執着しています。

   実体のない3つの世界

   『夢、現、幻』の3つの世界は、其々異なった原因によって作り出されています。

   うつつ(現)世界は、外部感覚器官から流入した情報によって作り出されています。
   しかし、それはそのままではありません。脳内部の記憶痕跡と結びつて、外部情報と記憶痕跡の融合物となっています。意識が知覚しているのは、この融合物です。
   従って、同時に過去の体験も知覚しています。その記憶痕跡の方ばかりを意識知覚して、いま体験している現世界が解ったつもりになっていることも、結構あります。現実に目を向けないで、常識にばかり目を向けている人もいます。
   このうつつ(現)体験の心理学は、皆様が、心理学だと思い込んでいる通常の心理学です。比較的整備されています。

   ゆめ(夢)世界は、満たされない欲望が原因となって生じています。
   その欲望と記憶痕跡の融合物が意識器官に雪崩れ込んで夢を形成しています。基本的には、テンションの放出、即ち、意識器官を使った願望充足行為です。願望充足行為であるがゆえに、行動の原因となる欲望は夢によって消滅してしまい、日常生活に影響を与えることはありません。また、記憶にもあまり残りません。
   ゆめ(夢)体験の心理学は、フロイトによって、確立されました。しかし、評判はあまり芳しくありません。その原因は、欲望の存在に、直接触れてしまったからです。人々が、一番誤魔化したいと思い込んでいる欲望の存在を直接扱ってしまったので、人々の反感をかってしまいました。
   それ以後の夢理論は、この欲望を否定するのに、一生懸命です。見ていても、可哀そうになります。

   まぼろし(幻)世界は、何が原因になって作り出されているか解りません。
   その未知の原因と心の状態が映像化されて、意識にとっての知覚対象が作り出されています。
   この世界の大きな特徴は、次の3つです。
  1. うつつ(現)体験と同じような、非常にリアルな体感を伴っています。
  2. 同じ幻覚が3度繰り返すことがあります。
  3. 幻体験から覚めた後、それに起因する具体的肉体行動が生じてしまう。
   リアルな体感を伴っているので、しばしば、死後の世界に迷い込んでしまったかのような錯覚に囚われてしまいます。
   また、願望充足体験ではないので、日常生活にも、何らかの影響を与えてしまいます。まぼろし体験に導かれるように、現実世界を彷徨い、それに遭遇してしまう人々も、結構、大勢います。

   ひょっとしたら、まぼろし(幻)体験自体は、平凡な現象かもしれません。命の危機とか睡眠不足と言った体調不良時に、たまたま、強力な刺激が加わった為に、意識知覚になってしまっただけなのかもしれません。
   普段は、その刺激が弱い為に、意識知覚出来なくて、気が付かないだけかもしれません。しかし、『幻体験を経験(意識知覚)しないこと。』と、『幻体験を引き起こしている未知の原因が日常の実生活に影響を与えていないこと。』とは、別問題かもしれません。
   意識知覚できないだけで、実際には、日常生活に大きな影響を与えているかもしれません。気付かないだけで。
   自分の肉体の行動を、注意深く観察していると、時々、原因に思い当たらないことがあります。気のせいだといいのですが。

   まぼろし(幻)体験の心理学は、まだ、確立されていません。それ以前の問題として、現象の存在自体が認められていません。薬物幻覚と同じように、精神異常だと見なされています。
   まだ、まだ、先の長い話です。

   以上の3つの世界の関係を一覧表に纏めておきます。

意識が知覚対象としている3つの世界
事象名 外部原因   内部原因   知覚世界 行為の目的
現体験 外部感覚器官の情報 × 記憶痕跡 --> 意識の世界  肉体の願望充足行為 
夢体験 満たされない欲望 × 記憶痕跡 --> 意識の世界 架空の願望充足行為
幻体験 × 心の状態 --> 意識の世界  ?


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