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3.本能的行動


   動物の行動を、本能的行動、学習された行動意識された行動の3段階に分け、その夫々に対応して、脳が特徴的構造を持っていることを説明します。

   前半の本能的行動、学習された行動については、現代科学の常識の範囲内の知識であって、それほどの目新しさはありません。
   意識された行動は、全く、新しい内容です。多分、始めて、聞く話だと思います。知的生命体の脳の構造の特殊性について論じています。

   意識された行動は、本能的行動や、学習された行動の延長線上にあります。基本的には、その原理が同じであり、代用物であると考えられます。
   従って、本能的行動や、学習された行動などの常識的話を整理することによって、始めて、本題の意識された行動が理解できます。そこで、あえて、この常識的問題を、再度、整理しておきます。

動物の行動様式の進化と、話の常識度 
 第一段階 本能的行動  ->  常識的内容です。
 第二段階 学習された行動 ->   まあまあ、常識的です。
 第三段階 意識された行動 ->   常識の範囲外です。

   具体的には、下図のような脳の構造と、この構造の違いによって、夫々、特徴ある行動様式が生み出されていること論じます。

   まず、話しの前提として、『物体として脳』と、『現象としての脳』の違いを明確にさせます。

現象としての脳と、物体としての脳

物体としての脳は、頭蓋骨の中の豆腐を意味しています。
現象としての脳は、脳と環境との間で起こっている相互作用を意味しています。
環境も含めた現象系全体の因果関係を、考察の対象にする必要があります。唯物論の先入観を捨てて下さい。

この相互作用は、脳と環境の間でフィードバックしています。
このフィードバック過程が、制御システム系を構成しています。

なお、五感と運動器官は、脳自身からは、環境の一部と見なされます。

脳は環境の真の姿を知りません。感覚器官を通して知るのみです。
また、直接、環境に働き掛けている訳でもありません。運動器官を通して、間接的に働き掛けているだけです。
神経組織上を流れているのは、電気信号(パルス信号)です。実体ではありません。(我々は実体を認識している訳ではありません。)

   次に、『現象としての脳』の構造に注目します。『環境』と『脳』の関係を整理します。

脳の進化と、行動様式の関係

脳は、この肉体の生存と行動を支える為の制御システム系です。
意識感覚器官を持った人間の脳は、2組の独立した制御システム系より構成されます。

第一システムは、肉体の現実行動を制御します。感覚器官は五感から構成されます。
第二システムは、肉体の架空行動を制御します。意識感覚器官から構成されます。

『考える』という行為は、この第二システムを使った肉体の架空行動を意味しています。
即ち、人間の脳は、意識器官というシミュレーターを搭載した二重構造になっています。
ここに、知的生命体の秘密と苦悩が隠されています。

ちなみに、人間の脳内部には、第二システム用の架空環境(仮想現実)が作り出されています。この架空環境内での架空行動が、即ち、『考える(シミュレーション)』行為です。
意識の知覚対象は、この架空環境です。

この架空環境の世界を実感したい場合、夢を思い出して下さい。夢の時、瞼は閉じている訳ですから、これは外部感覚器官からの信号で作り出された世界ではありません。
このような架空環境は、人間の場合、『ゆめ(夢)、うつつ(現)、まぼろし(幻)』の三種類あります。夫々、作り出される原因が異なっています。

注)なお、意識器官の概要は、こちらを参照下さい。


   最も基本的な脳のモデル

   最も基本的な脳のモデルは、それを動かすために必要なプログラムの全てが、生まれながらに(製造工程で)組み込まれているようなタイプです。

   例えば、コンピューターを例にとれば、これを動かすためには、そこになんらかのプログラムを組み込んでやる必要がありますが、それが全て製造の段階で組み込まれているような場合です。
   家電製品に組み込まれているマイコンが、その代表です。炊飯器などの家電製品を制御する為に製造段階で組み込まれており、殆どは、後で書き換えることが出来ません。

   この様に遺伝的に胚発生の段階で組み込まれるプログラムを、心理学や生物学では『本能』と呼び、生理学では『無条件反射』と呼んでおります。コンピュータ業界では、『ROM(read only Memory)』と呼んでいます。

 本能の定義 :  遺伝的に、胚発生の段階で組み込まれているプログラム。 
 同義語 無条件反射、ROM
 変更する為には :  本能の内容を変更する為には、進化する必要がある。

   厳密な意味では、どの様な下等な動物の神経組織にも、多かれ少なかれ、学習作用はあるようですから、と言うよりは、神経細胞そのものが、学習作用を持つているようですから(注1)、純粋に無条件反射(本能)のみから構成された神経組織を持つ動物は、存在しないと思います。
   しかし、ここでは、その様な細かいことは気にせずに、ごく常識的に、おおらかに考えます。

   昆虫たちは、学習に対する依存度が低く、教わらなくても、また、これといった体験学習をしなくても、立派に一人で生きていくことができます。生きるために必要なプログラムのほとんどは、本能として与えられていますから、ただ本能の命じるままに生きても、それで充分完成されています。この様な動物たちの神経組織のモデルは、下図のようになります。

本能(脳)と環境の間で、作用がフィードバックしています。

 

本能的プログラムを変更するには。

   この動物たちの神経組織の特徴は、それが本能のみから構成されていることです。
   従って、進化論上は、次の点が重要になります。もし、この様な動物が、新しい環境に適応するために、行動のプログラムを変更しようと思ったら、進化する必要があります。
   なぜなら、これらのプログラムは、本能として遺伝的に決定されているものであり、遺伝の内容を変更する為には、進化する以外に方法がないからです。

   このために世代の交代が必要になり、時間も掛かることになります。このプログラムの変更のために、進化する必要のあることが、この段階の神経組織の特徴です。

プログラムを変更する為には 進化する必要がある。


学習、意識された行動では進化する必要がない

   ちなみに、学習された行動や、意識された行動では、プログラムの変更に進化する必要が無くなっています。世代交代が必要なく、個体レベルで可能となっています。

   学習された行動では、体を使った『体験学習』でプログラムを変更することが可能です。進化する必要がありません。個体レベルの体験学習で可能です。
   この段階の神経組織では、『本能』の代用物として、『学習結果』が本能の周りに付け加わっています。


   意識された行動では、頭を使った『考える行為』によって、プログラムの変更が可能になっています。
   脳内部の形式的な信号処理(考える行為)だけで可能です。体を使った体験学習も必要無くなっています。頭を使った架空体験(考える行為 ≒ シミュレーション)だけで可能です。
   この段階の神経組織では、『体験学習』の代用物として、意識器官を使った『考える行為(架空体験)』が発生しています。

脳の構造 処理階層 新しいプログラムの取得方法 
 本能的行動   種  進化する必要がある。 
 学習された行動   個体
 体を使った、体験学習で可能。 
 意識された行動   架空体験   頭を使った、考える行為で可能。
注)同じ目的が、異なった階層で処理されています。
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注1)学習作用について
   厳密な論理を展開した場合、全ての細胞が持っている環境変化への適応力と、神経細胞の学習作用の間に、明確な境界線を引くことは不可能と思われます。
   神経細胞の学習作用は、全ての生物細胞が持っている環境変化への適応力が原型となって、特化したものであると思われます。